2000/11/26
[CLIE0039] Palmware探索の旅 〜メモするぞ〜

 さて、久々のPalmware探索の旅、第3段はメモとしての使い方である。手帳に変わるPDA的要素としてのメモは利用頻度も高いものではないだろうか。

 さて、どんなときにメモを取りたくなるのだろう。Palmwareを選ぶ前にまずはメモを取るということについて考えてみる。
 仕事であるコンサルティングではよく「目的思考で」ということがいわれる。ITの導入は手段であって目的ではない。目的思考で考えると、あえて手書きにした方がいいというケースだってある。目的思考とは「なんのためにそれをやるのか?」と問いかけることによって、より広い視野で手段を発想することだ。まさぞうにとってCLIEは愛着のあるよき道具ではあるが、目的ではない。今回もCLIEだけではなく、関連する他の手段もあわせて目的思考で考えてみることにする。「は?たかだかメモじゃん。そこまでやるかっつーの」という意見もあるかと思う。しかし、されどメモである。ちょっと職業病が入っているのはご愛嬌である(爆)。

 コンサルティングの現場で分析をする場合、分析対象に関するメカニズムに着目することからはじめる。例えば業務に関するコンサルティングの場合は、業務間に流れる情報を明確にする。これによってはじめて、どこで問題が発生していてそれがどこに影響があるのかが分析できるのである。
 今回もこのやり方にのっとり、まずメモのメカニズムに着目してみよう。このメカニズムを記述するというのがなかなか難しいのであり、それこそがノウハウなのであるが、そのやりかたは企業秘密ということにしておこう。:‐)

 物欲コンサルタントのまさぞうが抽出したメモのメカニズムは以下の通りである。

  1. 関心事の記憶
    普段から特定テーマに関することを気にかけていくことでいろんなものを取捨選択できる。

  2. 対象の検知
    いろんなシチュエーションで5感を駆使して対象を感じ取る。

  3. 記録欲求の発生
    対象検知で入ってきたものを特定テーマに合致するがどうか判断し、必要ならば記録したい欲求を発生させる。

  4. メモの記録
    記録したい欲求に基づいて、メモを記録する。メモする速度と量がメモという機能に影響をおよぼす。メモしたい対象が時系列的にどんどん変化する場合はそれに追従するための記録速度が必要だし、変化しなくてもメモする情報量が多い場合は手段によってはメモに時間がかかる。

  5. メモの参照
    記録したメモを参照する。「なんのためにメモするのか」、それは別の時間、空間で記録したものを参照して利用するためである。

  6. メモの転記
    メモは記録したメモのまま参照して利用する場合もあるだろうし、書類など他の媒体に転記して使う場合もある。テキスト形式で記録したものは電子的に再利用可能だ。

  7. メモの整理
    多量のメモがたまってくると、参照するに時間がかかる。カテゴリ分け、インデクス付けなどを施してメモを整理すると検索時間が少なくてイライラしない。

  8. メモの削除
    メモを整理する段階でいらないものは捨ててしまう。メモにはある目的が達成されれば消してもいい一過性のもの、そのまま、または別の形式などに転記・加工してずっと保存しておきたいものがある。(フロー情報とストック情報)

 さて、メカニズムが明らかになったところでさっそくメモについてより具体的なシチュエーションを分析してみよう。分析対象としてCLIEを使い始めているときからたまっているデータと、過去数年分の紙の手帳を用意しそれらからサンプリングする。結果としてよくメモをとるのは以下の情報であることがとわかった。1つ1つ分析してみよう。

1)発想のストック
 電車の中吊り広告をみる。街中で人の何気ないしぐさをみる。む?おおおおおおお。
発想がひらめく。とにかく鮮度が命で、発想が消えないうちに、電光石火でメモする。ひらめきは文章の1フレーズだったり、イメージ図だったりする。言葉や図形が浮かばなく、対象物そのものを記録したい場合は、CLIEではなくデジカメが活躍する。
 発想を膨らませるためにその場で関連して連想されるものを記述してしまう場合もある。転記は電子的になっている必要性は低い。未来永劫メモの形で記録されていることはまれで、なんらかの成果物に利用された時点で消してもいい情報である。成果物とはWebページのコラムであったり、仕事の企画書だったりする。
 という訳で、このシチュエーションで利用するのは手書きメモだ。記録はそれほどの量ではない。発想を膨らませる場合は、テキストメモを使う場合もある。しかしキーワード列挙だけで、長文を書きたくなったら、PCなどキーボードのあるものに切り替える。

2)議事録
 この年になると新人のころのように議事録取りが会議参加の主目的なんてないし、インタビューではないから、発言重視で、メモ取りはキーワードとか数値などしか記録しない。もし自分が議事録を後で書くとしても、キーワードメモをそのまま使えるはずもなく、文章としての再構成が必要で、電子的に利用するよりは、メモみながらPCか何かで再入力した方が早い。さらに記録時には話はどんどん進むので筆記の速度が要求される。聞きながら頭の中で図解発想し、その図を記述した方がいい場合もある。
 という訳で、このシチュエーションで利用するのは手書きメモだ。内容も盛り沢山になることがあり、大量の手書き記録が要求される。

3)値札
 物欲レーダーが動作し、これは!という商品の価格やスペックをメモする。記録には即時性が要求される。デジカメを持っている場合は値札ごと写しちゃう。商品イメージも撮れるし、値札にスペックとか書いてある場合が多いからである。価格.comのようにとくに価格に関するWebページ作成を身上としていないので、その商品が選考から落ちた時点でメモ情報は不要になる。店によっては「撮影禁止」としているところもあるので、その場合はやっぱり手書きメモである。価格だけならいいが、スペックとかたくさんメモする場合はちょっとうんざりしてしまうが。
 という訳で、このシチュエーションで利用するのはデジカメだ。CLIEは補足的手段となる。CLIEで取る場合は、手書きメモということになる。

4)今日やること
これは紙の手帳によく書いてあってものだ。例えば、今日秋葉原にいくとする。短時間にいろいろ見るためには事前計画が重要だ。そこで見たいものを思いつくままにメモメモ。キーワードがわかればよく、筆量は少ない。巡回の抜け盛れを確認するために、それぞれの項目を実行したか後でチェックする。
 という訳で、このシチュエーションで利用するのはToDoListだ。メモはメモであるが、後からチェックすることを考えればそれ専用のPalmwareが有効。

5)相手の電話番号
電話しながら手帳にメモ。ある程度速度が要求される。筆量は少ない。最終的に電話番号は携帯電話にいれてしまう。そうすればワンタッチで電話できるからだ。携帯の機種によっては通話中でも番号登録できるのがある(自分が使っているD501iはできる)のでそこで入力してしまうが、会社の電話などではやはり手書きメモで即時入力し、あとで携帯電話やアドレス帳や転記する。
 という訳で、このシチュエーションで利用するのは携帯電話だ。CLIEは補足的手段となる。CLIEで取る場合は、即時性からいって手書きメモということになる。

6)宅配便の送付先
 送付するときに相手にEmailか電話で問合せ、手帳に手書きでメモ。あとで参照してコンビニで伝票に転記するのに使う。何度も送る必要性がある場合は使ったあとアドレス帳に記録する。Emailできた場合はカット&ペーストしてPC上のPalmDeskTop経由でメモ帳やアドレス帳に流し込む場合もある。
 という訳で、このシチュエーションで利用するのはまず手書きメモで、相手からEmailで受取った場合はPC+CLIEのテキストメモ(またはアドレス帳)という使い方をする。

7)覚書
パスポート番号、クレジットカード番号、シェアウェアのパスワードなど、ある物に記録されているものを転記して、利用する。記録時の即時性は要求されない。参照においては、内容が機密的であるので、簡単に見れないようにガードしておく方がベター。
 という訳で、このシチュエーションで利用するのは基本にテキストメモであるが、自己防衛のためにはCLIE自体にロックをかけるなどの運用が必要だ。

 以上ようにシチュエーションと実際の使い方をみていると、「手書きメモ」が圧倒的に多い。即時性が要求されることが一番だからであるが、その他に「電子的につなげる」という点にまさぞうがこだわっていないからだともいう。テキスト情報はテキストとして電子化しておいた方がのちのち利用可能と思いがちなのだが、議事録の用途を見るとわかるように、結局再構成した方が早いということが現実だ。

 ということで、まさぞうが使うCLIEでのメモは手書きでの即時性を重視し、手書きメモを選定することとする。覚書など一部のテキストメモは標準のメモ帳でOKである。
 Muchy's Palmware Review!によると、手書きメモのPalmwareはいろいろある。とにかく手書きの速度にこだわったもの、ZAURUSのインクワープロのように文章だけをどんどん入力して清書しようとするもの、アドレスなど他のPalmwareに転記することを目的としているもの。用途に合わせて色々切り替えて使えばいいが、汎用的な方が応用がきくのであえて1つの選定することとする。
 さて、上記のシチュエーション分析の結果、まさぞうに必要なPalmwareの要件を導くと以下の通りとなる。

  • 起動したら即手書きメモが書ける。

  • ささっと書いてもきちんとペンをトレースできる。

  • 大量の文章も記述可能。

  • 文章と図形を混在できる。

  • 記述スペースが画面いっぱいある。

 ということで選定したのが、漆畑さん作のHandMemoである。選定の決め手になったのはとにかく速度を重視している点と、1つのメモの中にページがあり、ページの中に16枚のサブページが持てるという点。これが色んなものを混在してメモしていくまさぞうの現状に合っている。ビューを切り替えてCLIE内での手書き→テキストへの清書をサポートする機能、手書きメモをPCへ転送し、ビットマップに変換できる機能などもあるが、まさぞうは実生活で1度も使ったことがないので選定の観点にはならない。

 ここまで読んでくれた人はお疲れ様といってあげたい。「なんや、初めから決まっているPalmwareを示せばいいやんけ!」と思った方。ある意味ではあなたは正しい。しかしコンサルタントの間ではそれを「案ジャンプ」という。ITをいれても使わなければ意味がない。目的を考えて惚れこんで使わないと単なるPalmwareインストール&コレクターになってしまうのである。実はそれはそれで楽しいのであるが。:-)

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